ガウディの設計態度

相模書房 1979

   松倉保夫 著


(技術、工学、工業) [書誌所在情報] [みなさんの感想]

柏崎隆志(工学部)

 建築学科を志望された皆さんは、現在街に建っている全ての建物が、『建築基準法』 に基づいて、設計されていることは知っていますね。また、鉄骨造建物、鉄筋コンクリー ト造建物などは、更に細かい設計規準によって規定されています。これらの基準は、積載 荷重、風荷重や地震荷重など様々な外的荷重に対して、建物が壊れることなく、そこに住 む人々の生命や生活環境を守ることを目的としています。 『私は将来建築家を目指すの だから、構造計算は構造事務所に任せればいい』 と思いがちですが、建物全体を通して 合理的な設計を進めていくためには、建物の美しさや機能ばかりに関心を寄せるのではな く、建物が普段どのような荷重を受けているのか?、あるいは強風や強地震を受けても、 壊れないようにするためにはどう設計したらよいか?、というある意味では設計の基本と なる構造的な面についても、しっかりした基礎知識を身につけてもらいたいと思います。

 そこで、建物の美しさと構造的な合理性をうまく結びつけた建築家アントニオ・ガウデ ィについての本を紹介します。私がこの本と出会ったのは、大学2年生の頃だったと思い ます。当時は、スペインの建築家であるガウディが、かなり脚光を浴びていました。彼の 作品としては、カサ・ミラ、グエル公園、更に現在も建設中のサグラダ・ファミリアなど が有名ですが、いずれの建物も、『ゆるやかな面の集まり』 という第1印象を私は受け ました。ガウディについて知識の浅かった私の第1印象は、非常に貧弱かもしれませんが、 私の生活環境でよく目にする建物とは、明らかに違いを感じました。私は、ガウディがな ぜ建物を 『ゆるやかな面の集まり』 として表現しているのか?という疑問を感じました。 この疑問の答えが、『ガウディの設計態度』 の中に隠されていました。本の内容につい て詳しく紹介してしまうと、皆さんの読書意欲が半減してしまうので、概略だけ紹介しま すと、ガウディが 『ゆるやかな面の集まり』 から建物を作り上げるのは、単なる思い付 きやデザインセンスによるものではありません。自然界に存在する建物が必ず解決しなけ ればならない、重力に対する合理的な設計法の1つとして、彼は 『ゆるやかな面の集ま り』 を用いているのです。彼は有名な 『逆吊り実権』 を何度も繰り返し、彼なりの合理 的な設計を見出したのです。

 皆さんも、これからいろんな建物の設計を経験していくと思いますが、単にかたちの美 しさだけではなく、構造的な合理性をも兼ね揃えた建物の設計を目指してください。


culis@ll.chiba-u.ac.jp Jun. 1995