科学者とは何か
(新潮選書)1994
村上陽一郎 著
(自然科学)
[書誌所在情報]
[みなさんの感想]
杉森みど里(看護学部)
本書は、科学者という職能集団が、「いつ、どのように形成されたのか、その中での構
成員はどのような行動原理によって支配されるようになったのか、それは現代社会の中で
どのように位置づけられるのか」という問題を明らかにすることをとおして、「科学技術
に関わる研究者の資格とその責任の変革」を訴えるものです。著者は、知識職能者として
の「科学者」(scientist)が誕生したのは,19世紀半ばのことで、
それ以前のガリレオや
ニュートンは、むしろ神学的な立場から知的活動を行っており、科学者とはいえなかった
ことなどをのべながら、科学者という社会層の発展や科学研究が市民権を得るまでの過程
を外観しています。また、「20世紀科学の最大の成果、量子力学が、人類に核エネルギー
という新しい火をもたらしたが同時に核戦争の危機をも作り出し」たこと、研究を評価す
る集団内部の方式の問題などを述べた後に、次のように言及しています。「科学者は、も
はや誰に対しても責任をとることを求められず,『真理』 のためと称して、自分の同僚
だけのために論文を書くことを行動様式とするような研究者であることを許されない。改
めて、社会と人類とに対して責任を持つことを、その倫理として確認し、そのことに向か
って 『研究』 を行うことを制約することが、研究者の資格として容認される。」
科学の価値と科学者にもとめられる倫理的責任についてわかりやすく、そして鋭く提言
する一冊です。
culis@ll.chiba-u.ac.jp Jun. 1995