常温核融合スキャンダル:迷走科学の顛末

朝日新聞社 1993

   ガリー・トーブク 著(渡辺正 訳)


(自然科学) [書誌所在情報] [みなさんの感想]

能川浩二(医学部)

 常温核融合に関するニュースを見たとき、まったくの門外漢である私でも、本当ならす ごいことだと驚嘆した覚えがある。その後、否定されて終わったと理解していた常温核融 合騒動の内幕ものとして、本書が出版されたことは知っていた。最近、他人から借りる機 会があって、読んでいる最中である。感想を一言でいうならば(途中ではあるが)、"お もしろくてやめられない"である。おもしろい理由の第1は、百人を越える登場人物が、 この問題にたづさわる姿勢の多様さが、克明に描かれているからだ。私は社会医学者とし て、公害病問題に関与した経験がある。社会から注目されるような事柄が起こった時、直 面している研究者、行政当局、地元の人々のそれぞれの動き、後からのりこんでくる人々 のこと、それらは「常温核融合スキャンダル」にも劣らないものだったように思う。真実 の追求を第一命題とする科学の分野においてさえ、である。千葉大学に学ぶ学生諸君には、 本書を人間学の書として一読することをお勧めしたい。難解な哲学書を読むよりもおもし ろく、手っとり早く、社会に生きる人間を、もちろん自分をも含めて考えてみる機会にな るだろう
culis@ll.chiba-u.ac.jp Jun. 1995