常温核融合の真実:今世紀最大の科学スキャンダル

科学同人 1995

   J .R .ホイジンガ 著(青木薫 訳)


(自然科学) [書誌所在情報] [みなさんの感想]

山本恵司(薬学部)

 「あなたはもう忘れたかしら…」という歌が昔はやりました。 今から6年前の1989年3月に常温核融合(cold fusion)という難解な 言葉が各新聞の一面を飾り、米国ユタ大学での大発見が人類のエネルギー危機に 対する救世主という印象を全世界の人達に与えました。 皆さんは、この話覚えているでしょうか? 多くの世界の科学者達はこの種の実験を 繰り返し、我も我もと成果を発表し、書店は今の大江健三郎ブームのような 常温核融合ブーム、多くのにわか物理学者が出現しました。

 あの話はどうなったのでしょう。その後、実はあの大騒ぎが自然科学の話だったのでは なくて、思惑の結晶だったのだ(つまりウソ?)という結論が米国常温核融合調査委員会 委員長によりなされました。その「顛末」について科学的に解説されているのが本書です。 ウソとたてまえがまかり通る世の中ですが、自然科学、とりわけ実験科学はウソがないと 信じられています。それは実験は、誰かが繰り返してみれば真偽がはっきりするからです が、その昔、癌の原因となる新しい寄生虫を発見したとしてノーベル賞をもらってしまっ た人もいる位で、騙された世間が悪いのさということも必ずあるのです。大騒ぎが去り、 私のタンスの中には、私の第3の故郷、ユタ大学(1983年から1年留学)の生協が大々的 に売り出した「世界初のcold fusion」と書かれたTシャツが残っているのです。


culis@ll.chiba-u.ac.jp Jun. 1995