スミルノフ高等数学教程 全12巻

共立出版 1958〜1962

   彌永昌吉(他)翻訳、監修


(自然科学) [書誌所在情報] [みなさんの感想]

大高一雄(工学部)

 大学1、2年における理工系学部教育の最大目標の1つは、数理的な理解力をつけると いうことである。自然科学は数式が多くを語る分野である。ここでは、数式をみてその式 の語る世界を読みとる力を数理的な理解力と呼びたい。教育目標だというのは、数理の分 野での学生の立ち上げの成否がわが国の理工系(大学内の研究と教育ばかりでなく広く、 産業界の内容なども含めて)の質(量はこのことと関係なく確保できる)を決めるからで ある。

 本シリーズは、スミルノフ教授が行ったレニングラード大学物理学科での長年の数学教 育を本人がまとめたものである。カヴァーする範囲は日本の理工系の大学院の初年までの 数学教育のカリキュラムと一致している。数学、物理の学生ばかりでなく、理工系全分野 の学生を視界に入れていること、読みやすく独習可能であること、全体の統一がうまくバ ランスして過不足がないことなどが、特長である。たとえば、ランダウ・リフシッツの物 理のシリーズ(これもすばらしいシリーズだが)と比べて、統一性という最後の点は、1 人の教授がすべての分野を書いたことによるのだろうが、はるかにすぐれているように思 う。

 半年に1冊をあげるというペースで進み、4年卒業までに全14巻のできるだけ最後にま で至りたい。同好の志数人と論講してもよいだろう(できのよい院生などをまき込むとな およい)。このシリーズに feed back をかけながらの学習生活は必ず諸君の将来のプラス となることをうけあう。たとえ、物理や数学を専攻するのでなくても、日々の学究面をさ さえてくれる重要な知識が身につくはずである。そのような数理的な知識を別にしても、 大きな体系への接近法、科学的な思考方法など得られることは一生ものである。最後に、 数学の独習の要諦を書いておく:ノートをつくりながらゆっくり進む。疑問があったら解 決したのち先に進む。よく考えたり、教師に尋ねたりして疑問が氷解し、その内容を心を 込めてノートにしるしながら新しい分野にわけ行ってゆくことほど、楽しいことはない。


culis@ll.chiba-u.ac.jp Jun. 1995