本書は、この「生活」を「生命と社会を媒介するもの」として研究的に明らかにしよう とする生活学の学術的発展を研究成果をもとに解説しています。
著者は、生活学を「生活者である私たちの学であり、つまりはあらゆる人々に解放され たみんなの学問」として「今後開拓していくべき分野であり、自分の身の回りから素材を 見いだし、それを調査分析して自分たちの生活を考えていくこと」を目的にしていると述 べています。そして、「きわめて個人的な関心」から「敗戦、戦後復興、高度経済成長、 そして低成長への転換という激しい社会変動の中で、ある平均的なサラリーマン家庭が生 活面でどう適応し、どのように生活を組み立てていったのか」という「都市サラリーマン 家庭の生活史の典型像」を「サザエさん」を分析し明らかにしたユニークな結果を紹介し ています。本書の特徴にもなっていますが、著者は、この分析のもう一つの目的として生 活学を追求する方法論を探索することもあげています。実際、ファーストフードの考現学 として、マクドナルドにおける客の食べ物の組み合わせの観察結果などを示しながら、生 活学研究の分析手順に関してもかなり詳しく説明しています。
本書によれば、生活学という言葉は1951年に生まれたそうです。つまり、看護学よりも さらに後発学問ということになるわけです。本書によって、「生活」に対する私たちの視野が広がるだけでなく、学問の独自性とはなにか、その学問を追求する方法論はどのよう にして生まれるのかという過程についての知見をも深めることができます。