生命にとって糖とは何か:生命のカギ・糖鎖の謎をさぐる

(講談社ブルーバックス)1992

   大西正健 著


(自然科学) [書誌所在情報] [みなさんの感想]

宇野潤(真核微生物研究センター)

 糖と言えば多くの人は、甘い砂糖を思い浮かべ、体内での役割はグリコーゲンとなって 人間のエネルギー源になる物質と理解している。またタンパク質と比較して、肥満を連想 し、脂質と共に悪玉扱いされることも多い。しかし、糖の役割はそれだけではなく、生体 内でタンパク質などと結びついて糖鎖の形になり、血液型の決定や免疫反応、細胞同士の 識別や結合、あるいは生体情報のアンテナになるなど、一口に言って生命現象の鍵とも言 える重要な役割を担っているばかりか、糖質工学・糖鎖工学として医薬・食品・その他工 業的に利用が広がっている。著者は、糖のこの意外とも言える糖の活躍は、なぜ、どの様 な形で行われるのか、そして糖鎖の研究からどの様な新技術が展開されているか解説して いる。

 このように、糖鎖科学が注目を浴びている現在、本書は一般人向けの読み易い手ごろな 本である割には、最新の糖質分野での情報が記述され、糖鎖の何がおもしろいのか、何故 今糖鎖が問題になっているのか、わかりやすく素人を飽きさせない血液型や血液に秘める 糖鎖の謎、生体情報にみる糖鎖、糖質工学・糖鎖工学の夢など記述し、教養書のみならず 学術書への入門書として最適な内容となっており、糖化学の知識を短期間で身につけるに は、時宜にかなった最適な一冊であろう。


culis@ll.chiba-u.ac.jp Jun. 1995