タバコやめますか 人間やめますか

ごま書房 1992

   広島県医師会


(医学) [書誌所在情報] [みなさんの感想]

大和田英美(医学部)

 ある外国の人口30万の都市で一定期間中に446人の肺癌患者が発生した。外科手術、放 射線、あるいは制癌剤など各種の治療を受けたこれらの患者の追跡調査を行ったところ、 5年後には生存者は4%であったとの報告がある。日本の平成5年の死因別死亡順位では 男性、女性いずれでも悪性新生物(いわゆる癌)による死亡が第一位である。癌による死 亡者のうち男性では第一位が肺癌である。女性では胃癌に次いで第二位である。上の二つ の報告は肺癌は完治しにくい癌であることを示している。肺癌発生の原因として喫煙習慣 が注目されている。2000年前に Mayan Indians が喫煙習慣を持っていたことの確実な証拠 があるそうであるが、15世紀末から16世紀初頭にかけてColombus と共に航海した Friar Pane が新大陸から Portugal にタバコを輸入してから欧米各地に喫煙習慣が広まった。1930 年代には65%の男性が喫煙者となったとの報告がある。喫煙習慣の開始から肺癌発生まで には30年から40年の time lag があるとされており、したがって欧米では1960年代に多数の 肺癌患者が発生した。その後欧米各国では喫煙率が低下し、現在では肺癌患者も男性では 減少傾向にある。喫煙習慣のみが肺癌の原因ではないが、膨大な数の疫学調査は喫煙習慣 が肺癌発生に深く関与していることを示している。千葉大学の全学部および私の勤務する 医学部学生の喫煙率のデータは無いが、講義の間の休憩時間に喫煙している医学部学生を しばしば見る機会がある。

 本書では、喫煙の害について精神的および肉体的な面(呼吸器、循環器、消化器、妊娠 などへの影響その他)について極めて平易に述べている。また世界各国のタバコ広告規制 の現状(1992年)について国別、警告表示、喫煙規制、政府の姿勢、医学団体の姿勢の項 目別に表として記載してあり、日本の現況と対比し興味深い。これらの後に喫煙習慣を断 つ方法を多く述べてあり参考になると思われる。


culis@ll.chiba-u.ac.jp Jun. 1995