知の技法

東京大学出版会 1994

   小林康夫、船曳建夫 編


(総記) [書誌所在情報] [みなさんの感想]

秋元英一(法経学部)

 大学1・2年生用のカリキュラムに、「学問の方法」を教えるものがない。方法がかな り決定的な意味をもつ社会科学においてもそうである。だから、いまだに、大学院生にな っても、論文の注のつけかた1つ知らない学生がいる。本書は、東大教養学部の必修科目 のテキスト用に作られたものだが、学問領域の広がりと深さをわれわれ研究者にも教えて くれる良書である。

 毎日読んでいる新聞の前提としている「知識」や「観点」がいい加減な場合が多いこと も本書に指摘されている。また、第III部表現の技術では、プロセスを含めた論文の書き方、 引用の仕方、ゼミでの学生の口答発表の仕方についても、論理的な飛躍のない、かつ聴衆 を飽きさせない方法が検討されている。従来から類書でも、文献の探し方は書かれていた と思うが、文献や資料の探索にも、いろいろな意味で「批判的な眼」が必要なことが再三、力説されているのも本書の特色である。

 学問といっても、研究室にこもっていればいい というものではない。フィールドワークあり、アンケートあり、それらをもとにした統計 的・コンピューター処理あり、翻訳あり、史料解読ありということで、学問的しごとのお もしろさを語ってくれる。マドンナのヌード写真集からの写真を引用したレトリックとい う章では、テレビに釘付けになることの危険を指摘して、映画館や美術館に通う「知的刺 戟」が今の学生にいかに必要かが主張されている。


culis@ll.chiba-u.ac.jp Jun. 1995