また、我が国においては図案調整家としてデザイナーが出発したことについてもページ が割かれている。この点において、本書は、日本のデザイン史について論述された数少な い著書のひとつになっている。
ともすると、デザインは色や形を決定する行為であると解釈されがちである。しかし、 この書の随所で筆者が触れているように、今日のデザインが成立するまでの史実を採集し、 その軌跡を正しくトレースしていくことにより、デザインの本来の意味とその役割を理解 することができる。筆者はいっている、「デザイナーは、まず生活技術者でなければなら ぬ」と。考えさせられる奥行きの深いことばである。
なお、著者の故小池新二先生は、本学工学部工業意匠学科で教鞭を執られていた。図書 館には「小池文庫」として小池先生の所蔵図書(和書・洋書合わせて7000冊)が保管・公 開されている。貴重な図書も多数ある。「生活技術者」としての真のデザイナー像を先生 がどれほど広範な地平のなかで構想されていたかもよくわかる。研究資料としても大いに 活用してもらいたい。