ナイロンの発見
東京化学同人 1971
井本稔 著
(技術、工業、工学)
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[みなさんの感想]
福島 和貴(真核微生物研究センター)
化学者によって書かれたナイロン(Nylon)の発明者
Wallace Hume Carothers(1896. 4〜1937. 4)についての伝記である。衣食住をはじめ我々のまわりをふと見回したとき、
余りにも多くの合成高分子物質にかこまれているのに驚く。これら物質の中には、今日、
時に社会悪として取り上げられるものもあるが、科学は果たして人類を幸せにしているの
であろうか。私はナイロンの語源にツルゲーネフがつくった虚無主義(nihilism)がある
ことをこの本で初めて知った。18才のCarothersからとりあげられている。彼は合成ゴム、
合成繊維の発明と輝かしい業績を挙げ、人類の生活向上に貢献し、なお次ぎなる業績に多
くの期待を寄せられているさなかに、自らその若い人生に幕を下ろしている。その原因は
ともかく、心が病んだのは確かであろうがさみしい。尽きることのない科学の進展にゴー
ルは無く、揺れる心の襞は凡人の域をでない私にも一部理解できる気がする。無条件に心
が満たされる事、時、愛が与えられていいはずなのに。本書は小冊子で、なお簡潔な文章
は一気に読み終わらせてくれ、一読を薦める。
culis@ll.chiba-u.ac.jp Jun. 1995