24人のビリー・ミリガン(上・下):ある多重人格者の記録
早川書房 1992
ダニエル・キイス 著(堀内静子 訳)
(文学)
[書誌所在情報]
[みなさんの感想]
田中 玲子(真核微生物研究センター)
この内容はフィクションではなく実際に起こった事件の記録に基づいた話である。1977
年にオハイオ州で連続強姦犯として起訴されたビリー・ミリガンは、精神異常のために無
罪となるが、その無罪を勝ちとるまでの彼と弁護士さらに彼を取り巻く人々の証言を綴っ
たものである。ビリー・ミリガンは24もの人格を持ち合わせた多重人格者であった。この
本での多重人格者の描写は、ある時期におけるピカソの抽象画のようで、第三者がある対
象を時間経過や次元を同一画面上で見るが如くに描かれていてとても新鮮さを感じる。描
かれている個々の人格について、運動、知的能力をはじめとするさまざまな能力は、とて
も同一人間とは思えないほどにかけ離れており生命の不思議さに驚かされた。世間ではこ
のような多重人格者は精神異常者として認識されているが、この本を読む内に何が異常で
何が正常であるかという識別が困難になる。元来精神活動というものは、他人が介入すべ
きものではないのだが、身体的疾患と同様に精神的疾患には医師というヘルパーが必要な
のだろう。このようにこの本は改めて精神活動の不思議さを痛感させるものであった。
culis@ll.chiba-u.ac.jp Jun. 1995