二十世紀モード:肉体の解放と表出

(講談社選書)1994

   能澤慧子 著


(社会科学) [書誌所在情報] [みなさんの感想]

杉森みど里(看護学部)

 本書は、西洋服装史を専攻する著者が「20世紀も残り少なくなった現在、あらためてこ の世紀のモードの歩んできた方向を見つめなおしてみた」ものです。飾られた体からの女 性の解放、「反抗」のシンボルとなったジーンズの歴史、一見相反する性質を持つように 思える60年代のミニスカートとパンタロンがともに女性の脚から性を解放した経過などを わかりやすく解説し、社会のモラルや通念、女性観の変容を描写することによって、「機 能性を追求し、肉体を解放し、大衆を引き込んだ」二十世紀モードの世界に読者を導きま す。

 そして、現代において、衣服が単なる防寒や外傷からの皮膚の保護のためにあるのでは なく、「個人個人の様々な個性や意識や趣味、思想、あるいは価値観の表示となって、一 人の人間の存在全体の表象になって」人々の文化を象徴していることを示し、衣生活の重 要性を私たちにはっきりと意識させてくれます。

著者は、あとがきの中で「モードは社会の高齢化の中で、高齢者や障害者にどのように 関わってきたのだろうか、あるいは今後関わってゆくのだろうか」とも述べています。こ の一節からは、衣服というものがその社会の成熟を反映すること、今後、私たちが関わっ ていく高齢社会をモードを通して検証する必要性があることが読みとれます。

 私たち女性だけでなく、今や男性も、確かに自分たちの衣服、モードに非常な関心を持 っています。しかし、高齢者や障害者そして、健康を損ない療養生活を送る人のモード、 衣生活にどれだけ敏感だったでしょうか。そんな思いも高まる一冊です。


culis@ll.chiba-u.ac.jp Jun. 1995