この本の著者らは、これまでのさまざまな日本人論(日本の特殊性論)を根底から批判 し、普遍性論の立場に立って国際理解をすすめることを日本人に訴えている。
著者らは、これまで日本の特殊性といわれていた社会現象が、ことごとくアメリカやオ ーストラリアにも見られると、1つ1つ例を挙げて反論していく。そして、これまでの日 本人論が通念としてきた日本人の特徴(集団主義的、自我が未発達、プライバシーの観念 が弱い、情緒的思考など)は本当かと問うてみる。たとえば、水平思考による思考実験と して、著者らは日本人を個人主義的傾向をもち、個人の独自性やプライバシーを重視する、 ドライな人間関係を尊重する人々と設定してみればどうかと、さまざまな事例を挙げて、 別の日本人像を説得的に示してみせる。
これらを通して著者らがいいたいことは、日本特殊性論は、日本人の国際性の欠如とい う性癖を招き、他国の人との間の相互理解の促進を妨げる役割を果たしていることに気が つくべきだということにある。要するに、「日本のことは日本人にしか分らない」とい った閉鎖的な発想をやめようということ。確かに、同じ現象でも視点を替えれば違った側 面が見えてくる。物事はすべて多面的であり、相違を前提とした共通性の発見という視点 にたつことが、日本人の国際化にとって重要なことだろう。いざ留学生と接触するとなる と、「ヤツラにはオレタチのことは分らない」と、すぐに日本人特殊性論の殻に逃げ込み がちになる本学の学生諸君にたいする挑戦的な書として、本書を推薦しておきたい。
著者らの主張には国ごとの社会現象の共通性を主張するあまり、やや論旨に無理がある 箇所も見受けられるが、ここまで三国の共通性を見せつけられると、目から鱗が落ちる思 いがすることは請合い。
著者らがこのような比較研究の視点を身につけることが出来たのは、日本人の杉本良夫 氏もアメリカ人のロス・マオア氏も、日本、アメリカ、そしてオーストラリアに、それぞ れ人生の三分の一ずつを暮したという生活体験をもつためだろう。
ロス・マオア氏は本学と大学間協定を結んでいるモナシュ大学(オーストラリア)の日 本学科主任教授、杉本良夫氏はラ・トローブ大学(オーストラリア)社会学部長。
なお、著者らによる共著として、『日本人論に関する12章』 (学陽書房、1982年)、 『個人・間人・日本人』 (学陽書房、1987年)、などがある。