パリ随想:ラ・ミゼール・ド・リュークス

みすず書房 1973

   湯浅年子 著


(自然科学) [書誌所在情報] [みなさんの感想]

東郷秀雄(理学部)

 本書は物理学者、湯浅年子が太平洋戦争の混乱期に渡仏し、フランス国立科学中央研究 所(CNRS)のジョリオ・キューリ教授(ノーベル賞受賞)の許での研究を通した随想で ある。そこには、苦境の中での研究に対する直向きな姿勢、挫折に翻弄されながらも邁進 してゆく純粋な科学徒の姿があり、また5月革命やフランスの論理を通し、いつも自問自 答しながら向上してゆこうとする生き様と純粋な人間愛には、大変感動的なものがある。 副題の La Misere de Luxe は "贅沢な貧乏草(雑草名)" と直訳でき、貧しきながらも科学 と人間愛に生きる著者そのものでもある、といえる。私はこの本を幾度か読み、私自身も ジプシー研究員の生活をしたが、心の支えとなった本のひとつである。
culis@ll.chiba-u.ac.jp Jun. 1995