不思議の国の相対性理論

新水社 1986

   ルイス・キャロル・イプシュタイン(井上正、久保田陽子 訳)


(自然科学) [書誌所在情報] [みなさんの感想]

上田裕子(工学部)

 数年前、ホーキング博士の来日前後には、さまざまなTV番組や雑誌で宇宙論や相対性 理論の特集が組まれ、多くの人が興味を持ったのではないでしょうか。また、高校の物理 という科目は驚くほど広い分野をさっとかすめていますが、この20世紀に出現した相対性 理論はその中にも含まれず、ちょっと魅惑的な雰囲気も漂います。相対性理論に関して聞 こえてくるのは、光の速度は誰からみても変わらないとか、高速のロケットに乗った人は 歳をとらない、高速で運動するほど重くなる、それに重い物の周りでは空間がゆがむなど のことですが、このような理論の本質とそこから導き出される現象を、この本は日常の言 葉と多くの絵で、数式をいっさい用いずに、すばらしく直感的なイメージの湧くたとえ話 で語ってくれるのです。私には、ブラックホールの入口まで行って中を覗いたような感じ がしました。とはいえ、当時のTV番組や「やさしい×××の話」、「×××の直感的理 解のしかた」、「絵とき×××」など、いかにもわかり易そうなタイトルの本は他にも多々 あります。けれども大方は単に(訳者の言葉を借りれば)"数式を日常の言葉に直すのに 精力を使い果たす"か、あるいは"薄めただけ"で結局、理論の筋立てはよく分からないも のがほとんどと思います。それに比べてこの本は、魅力的な話を読み進むうちに納得でき てしまうこと間違いありません。ちょうど古典文学には全く素人の私でも、すばらしい解 説書ならば万葉人の恋の歌にじんとくることができるように。最後に、この本の原題 「Relativity Visualized(目でみる相対性)」を、「不思議の国の…」とした訳者のセンスに も敬意を表したいと思います。
culis@ll.chiba-u.ac.jp Jun. 1995