文明が衰亡するとき

新潮社 1981

   高坂正尭 著


(歴史) [書誌所在情報] [みなさんの感想]

廣橋 亮(工学部)

 現代の西欧科学技術は危機に向かっているのか。第2次世界大戦後のアメリカ、ソ連の 二超大国体制も冷戦の終結によって解体し、アメリカの覇権も弱体化した。アメリカ、ヨ ーロッパ、アジアの三極構造が21世紀をリードしてゆくことが予測される現代文明がどの ように近代化されて行くのであろうか。近代文明が構築されるなかアジアにおける日本の 役割り、また、民族闘争の激しいなかでイスラムの世界の抬頭が西欧文明の発展にどのよ うな形で組み込まれてゆくのか大きな問題が提起されている。このようなことを思索する のに、古代文明の栄華とその衰亡の歴史散索が現代の警鐘ともなり得る図書かと思われる ので推薦したい。

(内容)
(1) 巨大帝国ローマが崩壊し、 再び活力を取り戻すことの出来なかった衰亡の過程の紹介、
(2) 通商国家ヴエネツィアの栄光は造船工業と地中海貿易の支配からの挫折、
(3) 現代アメリカの工業文明への信念の動揺がベトナム戦争を分水嶺として その優越は終え、活力の衰退をもたらした経緯の紹介。

 既に現代の人類の食料生産力の限界、天然資源の限界をローマ・クラブの"成長の限界" で認識させられている。生産社会の懐疑から情報産業社会への転換が先進国で進んでいる。 そして同じ民族のなかでの貧富の対立から文明への不信感へと増幅される危険の21世紀を 警鐘するに値する良書である。


culis@ll.chiba-u.ac.jp Jun. 1995