ホット・ゾーン(上・下)
飛鳥新社 1994
リチャード・プレストン 著(高見浩 訳)
(文学)
[書誌所在情報]
[みなさんの感想]
桝渕泰宏(薬学部)
エボラ・ウィルス。平素、動物を取り扱っている私もこの名前を知らなかった。しかし、
これは現実に存在するウィルスであり、最もどう猛な株の致死率は90%と言われる。本書
「ホット・ゾーン」は、この最悪のウィルス、エボラとの闘いの全貌を余すところなく描
き出したノンフィクションである。ここに描かれた物語は事実であり、登場人物もまた、
すべて実在している。このエボラ・ウィルスはサルから人に感染する。エボラ出血熱は、
1976年にアフリカのザイールで出現し、600人の患者のうち430人余が死亡するという猛威
を振るった。その飛び抜けた危険性故に、このエボラの感染の危険度は最高のレベル4と
判断され、エイズ(レベル3)以上にランクされた。このウィルスには、ワクチンも治療
法も存在しない。本書では、防護服に身を包んだアメリカ陸軍の特殊チームが、感染の恐
怖に耐えながらウィルスの封じ込めに挑戦する様を描いている。私はこのエボラという謎
のウィルスの存在も含めて、これほど恐ろしい事実があったのかと驚きの念が増す一方で、
薬の研究および開発において人の代替実験動物として使用されているサルの取扱い、また、
検疫システムに見直しが必要なのではないかと痛感した。遠いアフリカの出来事として描
かれた"恐怖"が、いつ我が国に訪れるのか分からないのである。人間と自然との関係を改
めて考える上で、本書「ホット・ゾーン」は黙示録的な啓示をはらんでいると言っても過
言ではないだろう。
culis@ll.chiba-u.ac.jp Jun. 1995